[更新日] 2022年3月14日

研磨の仕事内容とは?「研削といし取替試運転作業者」資格について

私たちの身近にある製品は、機能性だけでなく美しい見た目を持つものも多いです。美しい見た目を作り出すのに使われている技術が「研磨(けんま)」です。

研磨の仕事内容やメリット、研磨の仕事に必要な資格について紹介しています。

執筆者のプロフィール

はたら工場マガジン編集部
編集部には工場での仕事経験者をはじめ、ものづくりに関わる資格保有者や人材派遣会社のキャリアコンサルタント経験者が在籍。工場や製造業の仕事をわかりやすく解説します。専門家たちが集まる「はたら工場マガジン」の運営から得た知見を活かした情報発信を心がけています。

研磨の仕事内容とは

製品を使いやすく、美しくする技術

色々な素材を使用して作り出された製品は、表面に凹凸や素材そのものの質感が残ってしまっています。表面を削り、滑らかにすることによって製品を使いやすく、見た目も美しくできる技術が「研磨」です。

研削と琢磨によって行われる

研磨は、物を削る作業である「研削(けんさく)」と、表面を磨いて美しくする「琢磨(たくま)」両方の作業を合わせて行うお仕事です。研削と琢磨は2つセットで行われることが多いため、両者を合わせて「研磨」と呼ばれるようになりました。その影響で、現在は研削もしくは琢磨どちらかの作業のみの場合も「研磨」と呼ぶことがあります。例えば、アルミや金属の部品を削った時に出るでっぱりを取り除く「バリ取り」も、研磨に分類されます。

研磨に使う研磨剤について

研磨は製品の表面を削って磨くための「研磨材」を使用します。研磨剤には、硬い石でできた「砥石」と砂状になった石の「砥粒」の2つに分類できます。

古来より研磨の技術は天然の素材を使用して色々なところで用いられていましたが、現在では天然の素材よりも効率よく研磨ができる人造研磨材も多く誕生し、研磨の技術も飛躍的に伸びました。

研磨の方法

研磨材の使用方法には、製品に油や水をかけながら行うか、研磨材をペースト状にしたものに研磨液を加えて研磨を行う「湿式研磨」と、研磨液や水などを使わず、研磨したい製品と研磨材を直接当てて研磨する「乾式研磨」があります。それぞれにメリット・デメリットがあるので、加工したい製品によって適切な方法が選ばれ、研磨が行われています。

湿式研磨について

研磨は製品と研磨材を合わせて削って磨く作業のため、製品と研磨材のぶつかる面に熱が発生します。熱によって製品の表面の焼けやゆがみが生じてしまうことがありますが、湿式研磨なら冷却しながら研磨ができるため、表面の焼けやゆがみを防げます。更に、表面を湿らせることで滑らかになり、研磨の作業がしやすくなるメリットもあります。ただし、鉄などを湿式研磨すると、鉄と水が結びついて表面が酸化し、錆の原因にもなるデメリットもあります。

乾式研磨について

乾式研磨はシンプルに製品と研磨材のみで研磨を行う方法ですので、湿式研磨に比べて準備の手間がかかりません。製品と研磨材さえあれば、いつでもどこでも研磨ができます。また、研磨後の製品に付着した水や油、研磨材の砥粒を取り除く手間もありません。一方で、冷却ができないので研磨による熱で製品表面に焼けやゆがみが生じやすい、研磨加工中に粉塵が飛び散りやすくなるので、マスクやゴーグルを着用しての作業が必須などのデメリットがあります。

研磨が活躍する業種とは

研磨に関係した業種

金属加工

金属を使用する製品つくりの上で、研磨は最後の仕上げで欠かせない工程です。電化製品や自動車の細かいパーツから、食器などの日用品まで幅広い製品に用いられています。

硬い金属を研磨するには、更に硬い研磨材であるダイヤモンドや炭化ケイ素が用いられます。研磨剤の中ではダイヤモンドが一番硬いのですが、コストがかかる、鉄の研磨に不向きなどのデメリットがありますので、立方晶窒化ホウ素などほかの研磨材を研磨する金属によって変えて使用しています。

カメラなどのレンズ

カメラや顕微鏡、メガネなどに使用されているレンズは、透明なガラスの表面にカーブを作ることで物を拡大・縮小して見える性質を利用した製品です。レンズのカーブと滑らかな表面も研磨によって作られています。

宝石の研磨

宝石は発掘された状態のままでは当然ただの石です。この表面を滑らかに美しく研磨すると天然石から美しい宝石の姿に変わります。宝石専用の特殊な機械を使用し、表面を滑らかにするためにダイヤモンドの砥粒、細かくカットするときには炭化ケイ素の砥粒など研磨の仕上げ内容によって研磨材を変えて研磨を行います。

研磨の仕事のメリット

研磨の仕事のメリット・デメリット

研磨の技術力が身につく

研磨は、研磨したい素材によって使う機械や研磨材を適切に選択しなければいけません。ひとつひとつ綿密に人の手で行う研磨の仕事につけば、研磨の技術を身に着けることができます。研磨の技術力はものづくりの幅広い分野で用いられていますので、技術力があれば働ける場所も多く選べます。

集中してひとつのことに没頭できる

研磨は集中力が必要なお仕事ですが、作業中はただ製品を美しく・滑らかにすることだけに没頭できます。ひとつのことに没頭して黙々と仕事をしたい人に向いています。

自分の好きなものに向き合える

宝石やカメラ、食器など身近な物や趣味の物まで色々な製品が研磨によって作られます。自分の好きな物を作る研磨の仕事に就ければ、趣味と実益を兼ねて働くこともできます。

研磨を仕事にするデメリット

腕力が必要で筋肉痛になることも

工業用のやすりを使用して行うバリ取りなど、研磨の作業内容によってはある程度の力が必要になります。また、同じ姿勢で行う研磨は筋肉痛や腰痛になることも。力がなくてもできる研磨のお仕事や、作業に慣れることでこのデメリットは回避できます。

研磨の仕事に必要な資格とは

研削といし取替試運転作業者

研磨は、製品と研磨材(研磨といし)を使用して行う加工ですので、使用方法を誤ると重大な事故や災害に繋がる恐れがあります。このため、研磨を作業として行っている事業者は、「自由研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務」に労働者を就かせるときに、研磨材の危険性を十分認識させ、安全に作業を行える知識を身に着けるために「研削といしの取替え等の業務に係る特別教育」を受けさせる義務があります。

研削といしの取替え等の業務に係る特別教育は、18歳以上なら誰でも受講可能で、各都道府県の教育機関や職業訓練センター、事業者などの企業が講習を行っています。

研削といし取替等業務特別教育(自由研削)

本講習は労働安全衛生法第59条に基づき就業に必要な知識を付与するための教育です。

労働安全衛生法では、研削といし(グラインダー)の取替または取替時の試運転の業務を従事する者に、特別な教育を行うことを義務付けています。

講習科目及び時間

講習日程 科目 講習時間
1日目 関係法令 1時間
自由研削用研削盤、自由研削用といし、取付け具等に関する知識 2時間
自由研削用といしの取付け方法及び試運転の方法に関する知識 1時間
【実技】自由研削用といしの取付方法及び試運転の方法 2時間

研削といし取替等業務特別教育(自由研削)|静岡県労働基準協会連合会

研磨の仕事に就きたい、と考えた時には必須の資格となりますので、就職前に所得しておくのがおすすめです。

切削工具研削技能士

研磨の実務経験を持つ人が受けられる国家技能検定資格です。必須の資格ではありませんが、どの程度の研磨の技術力を持っているかの証明になりますので、研磨の仕事で転職やキャリアアップを目指したい人は取得すると有利に。

参考:厚生労働省 切削工具研削技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目

まとめ

研磨は今後も幅広いものづくり分野で活躍が期待できるお仕事です。好きなものの研磨をお仕事にしてみると、違った発見があるかもしれません。