
機械を構成する様々な部品を作り出すために欠かせない技術が「旋盤(せんばん)」です。旋盤がなす繊細な加工は技術力の結晶と言っても過言ではありません。
その旋盤を仕事にした人を旋盤工(せんばんこう)と呼びます。
旋盤の仕事内容や手順、旋盤工としてのメリットや年収をあげるための資格について解説しています。
【関連記事】
フォークリフト免許の費用と技能講習とは?学科と実技の試験内容
旋盤とは、加工をしたい素材を機械にかけて回転しながら、削ったり穴を開けたりする加工を行う技術を指します。また、回転させて旋盤を行う機械そのものも旋盤と呼び、旋盤を行う技術者を旋盤工と呼びます。旋盤によって作られた加工物は挽き物と呼ばれます。
旋盤によって鉄やチタン、アルミや銅、ステンレスから樹脂まで幅広い材料が切削加工され、特にねじやボルトといった細かい部品を作りだしています。スマートフォンのカメラレンズ部分の丸い枠や、イヤホンジャックの丸い部分なども旋盤で作られた製品です。
標準的な旋盤です。
卓上旋盤とは、作業台などに備え付けられている小型の旋盤です。「ベンチレース」とも呼ばれています。
加工物を回転させる主軸が大型で、旋盤工の正面に配置されている旋盤です。
主軸が横ではなく上に向いている旋盤です。加工物を水平に回して切削加工ができるので、バランスがとりにくい非対称の加工物を旋盤する時などに使用します。
普通旋盤にタレットと呼ばれる旋回式の刃物台を取り付けた旋盤です。旋盤を繰り返すたびに、切削加工に使用される刃物は劣化するため交換が必要になります。タレット旋盤は、タレットを回転するだけで刃物の交換が可能なため、主に旋盤の大量加工に使用されている旋盤です。
倣い装置を付けることによって、同じ形状を複製して旋盤したい時に用いられた旋盤です。これから紹介するNC旋盤の登場により、現在はほとんど使用されなくなりましたが、NC旋盤が登場する前には精密な複製、曲線が手動だけでは難しい時に多く使用されていました。
素材を回転させて切削加工をするのではなく、素材を削る刃物の方を回転させて旋盤する機械がフライス旋盤です。通常の旋盤が正円状の仕上がりを求められる製品や、加工物の内部と外部を同時に削り出したい時には通常の旋盤が適しているのに対し、旋盤加工の自由度が高いフライス旋盤は機械部品の生産に適しています。
設計図を元に、旋盤工がハンドルなどを使用して手作業で加工する旋盤が汎用旋盤です。全て人の力によって行われています。大量生産ではなく、特注品などひとつひとつ丁寧な作業が必要な製品に対して用いられています。
NC旋盤
人の手によって行われる汎用旋盤に対し、数値制御装置を旋盤に取り付け、刃物台の移動速度や送る距離を数値で指定、自動で旋盤できるようになったのがNC旋盤です。数値制御を意味する“Numerical Control”の頭文字を取り、NS旋盤と呼ばれています。
現在のNC旋盤は人が行うのではなくコンピューター制御が主流であり、回転から外れてしまった加工物の切削加工やフライス旋盤も可能になった「ターニングセンタ」と呼ばれるNC旋盤もあります。大量生産のためにNS旋盤が用いられることも多いので、多くのNC旋盤は刃物を自動交換可能なタレット式になっています。
また、全て手作業で行う汎用旋盤に対して、NC旋盤にはNC旋盤を指示通りに動かすためのプログラミング、プログラミング通りNC旋盤が動いているのかを確認するオペレーティングの仕事もあります。
旋盤も含め、製品を作る設計図となるのが図面です。近年ではCADによる3Dデータの図面も多く用いられるようになり、より複雑な図面も展開できるようになった一方、図面が読めない人も増えてきました。
旋盤は図面から瞬時に製品の仕様や特徴を把握しなければいけないので、旋盤のお仕事をすると図面を読める、簡単な図面なら描ける能力が身に付きます。図面が読めることは、旋盤だけでなくものづくり全てにおいて大きなメリットになります。
汎用旋盤はもちろん、NC旋盤でもひとつの製品を作るのに綿密な作業を行いますので、集中力が必要になります。ひとつのことを黙々と集中して行うことが得意な人は旋盤に向いていて、かつ自分の成果が製品という形として生まれるので、やりがいもとても高いです。
旋盤を行っている企業は、例えば腕時計メーカーシチズンの子会社で時計の部品の旋盤を担っている「シチズンマシナリー」などの、大企業の関連会社から、旋盤を専門で担っている中小企業まで幅広くあります。旋盤の技術があれば、大企業の中で働くことも、中小企業のアットホームな環境の中で働くこともできるので、自分で働きたい職場環境選びも可能です。
旋盤は刃物を使用して切削加工を行いますので、一瞬の油断やミスが大事故に繋がることも。作業に慣れても慎重さを忘れない、旋盤は正しく使用する、など怪我をしない環境づくりを常に行えば、怪我や事故は防げます。
旋盤に特別な資格は必要ありませんが、「機械加工技能士」の資格があると、どの程度の旋盤技術を持っているのかの証明になりますので、旋盤のお仕事を探す上で有利になります。
機械加工技能士は、厚生労働省が認定している国家技能資格のひとつで、各都道府県職業能力開発協会が実施している機械加工に関する学科及び実技試験に合格すると取得できます。
試験内容は旋盤の技術内容によって学科試験と実技試験に分かれていて、取得できる資格も旋盤技術ごとに異なります。例えば、汎用旋盤技術を持っているなら「機械加工(普通旋盤作業)」、フライス旋盤なら「機械加工(フライス盤作業)」の試験を受けることになります。
機械加工 普通旋盤作業
機械加工 数値制御旋盤作業
機械加工 フライス盤作業
機械加工 数値制御フライス盤作業
機械加工 平面研削盤作業
機械加工 円筒研削盤作業
機械加工 ホブ盤作業
機械加工 数値制御ホブ盤作業
機械加工 マシニングセンタ作業
実技試験は、各級と技術内容ごとに定められた実技を受けてクリアします。例として普通旋盤作業の実技試験を挙げておきます。
機械加工(普通旋盤作業)
1級 次に掲げる製作等作業試験を行う。普通旋盤(センタ間の最大距離が500~1500mm程度のもの)を使用し、φ60×150mm程度のS45Cの材料1個及びφ65×80mm(φ20の穴のあいたもの)程度のS45Cの材料1個に、内外径削り、テーパ削り、ねじ切り、ローレット加工、偏心削り等の切削加工を行い、はめ合わせのできる部品を3個製作する。
標準時間 3時間30分 打切り時間 4時間
2級 次に掲げる製作等作業試験を行う。
普通旋盤(センタ間の最大距離が500~1500mm程度のもの)を使用し、φ60×150mm程度のS45Cの材料1個及びφ60×57mm(φ25の穴のあいたもの)程度のS45Cの材料1個に、内外径削り、テーパ削り、ねじ切り、偏心削り等の切削加工を行い、はめ合わせのできる部品を2個製作する。標準時間 3時間 打切り時間 3時間30分
旋盤のお仕事は、行う内容によって様々です。求人サイトを利用すれば自分が携わりたい旋盤を行っている求人を見つけられます。
仕事の内容
*金属加工製品の加工(男女共歓迎)*旋盤加工・マシニングセンター・汎用フライス
・ワイヤー放電加工・研削加工学歴
高校卒以上必要な経験等
業務経験のある方必要な免許・資格
不問選考方法
面接 書類選考求人条件にかかる特記事項
増員経験年数浅い場合は指導します。得意分野あればアピール下さい。長く働ける方を望みます。
身近にある様々な細かいパーツは旋盤によって作られていることが分かりました。集中力を生かして工場の仕事をしてみたい、という方はぜひ旋盤のお仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。