[公開日]2020年6月23日

消防設備士で人気の甲種4類・1類は何ができる?

商業施設や宿泊施設、集合住宅など不特定多数の人が集まる場所には、法律で消火装置や防火装置を設置するのが義務付けられています。これらの消防用設備等の設置や点検を行なえるのが消防設備士です。

消防設備士のなかでも上位類となる甲種消防設備士は、乙類ではできない業務や取り扱えない消防用設備も取り扱えるようになるため、非常に需要の高い資格になっています。

甲種消防設備士のなかでも、1類と4類はとくに人気があり、試験の難易度も高くなっているのでしっかり勉強して試験に臨みましょう。

甲種消防設備士の1類と4類の特徴や試験内容、勉強法について解説します。これから甲種消防設備士受験を考えている人はぜひ参考にしてください。

執筆者のプロフィール

はたら工場マガジン編集部
編集部には工場での仕事経験者をはじめ、ものづくりに関わる資格保有者や人材派遣会社のキャリアコンサルタント経験者が在籍。工場や製造業の仕事をわかりやすく解説します。専門家たちが集まる「はたら工場マガジン」の運営から得た知見を活かした情報発信を心がけています。

甲種 消防設備士の特徴

甲種消防設備士は第1類から5類、さらに特類があります。それぞれの類で定められた消防設備の設置と点検、工事ができます。

なお、誰でも受験できる乙種に対して、甲種は特定の実務経験や学歴など、受験資格があります。

消防設備士は、市場や社会の動向に左右されず、安定した需要のある消防設備を取り扱う職種です。そのなかでも甲種は設備、点検のほか乙種ではできない工事もできます。

そのため、将来性の高い消防設備士のなかでも甲種はより需要が高いと言えるでしょう。なお、甲種消防設備士免許を持っていると、特別手当がついたり年収アップしたりする企業もあります。

また乙種にはなく甲種にのみ設定されているものとして特類があります。従来の消防設備に代わって設置が許可された、特殊消防用設備等の取り扱いができるようになります。

甲種1類と4類の人気の理由

甲種消防設備士のなかでも、受験者数がとくに多いのが1類と4類です。甲種消防設備士の全受験者数約3万8,000人のうち、1類は約1万人、4類は約1万7,000人の受験者となっています。

つまり、1類と4類のみで、甲種消防設備士全体の受験者の約70%を占めているのです。

1類は屋内消火栓やスプリンクラーなど、4類は火災報知機や警報機の取り扱いが可能になる免許です。

いずれも2015年の消防法改正にともない、施設に応じて設置が義務付けられるようになった消防設備です。そのため、現在も設置や点検の需要が高く、甲種消防設備士1類と4類も人気となっています。

甲4が活かせる仕事

1番受験者が多い4類は、煙や温度の上昇を検知して施設内に知らせたり、消防署に自動で連絡したりする、火災報知器や警報機が取り扱えます。

甲4消防設備士の資格が活かせる仕事は以下の通りです。

  • 火災報知器や警報機メーカーの社員
  • 消防設備の工事や設置を行なっている会社の社員
  • ビルメンテナンス会社の社員 など

また、火災だけでなくガス漏れを知らせるガス検知器も取り扱い範囲に入るため、報知器や警報機メーカーのほか、施設のメンテナンス業への就職や転職に使える資格として人気となっています。

甲1が活かせる仕事

1類は4類について受験者数が多い人気の類です。

屋内消火栓やスプリンクラーの設置が義務付けられたことにより、需要が高くなっています。

甲1消防設備士の資格が活かせる仕事は以下の通りです。

  • 屋内消火栓やスプリンクラーメーカーの社員
  • 消防設備の工事や設置を行なっている会社の社員
  • ビルメンテナンス会社の社員 など

こちらも消火栓やスプリンクラーのメーカーのほか、ビルや施設の点検や整備を行なうメンテナンス業で求められる資格です。

甲種 消防設備士の試験概要と難易度

甲種の試験概要

甲種消防設備士の試験内容は、筆記試験45問と実技試験7問があります。

乙種消防設備士の試験が筆記試験30問と実技試験5問のため、上位資格である甲種のほうが、試験全体のボリュームが多くなっているのが分かります。

甲種の第1類から5類の出題範囲はこのようになります。

  • 消防関係法令15問
  • 基礎的知識10問
  • 消防用設備等の構造・機能・工事・整備20問
  • 実技試験7問

特類の試験内容はこちらです。特類に実技試験はありません。

  • 工事設備対象設備等の構造・機能・工事・設備15問
  • 火災及び防火15問
  • 消防関係法令15問

受験料

受験料は5,700円です。

受験資格

受験資格は特類と特類以外で分かれています。かなり細かいのでここでは省略します。詳細は公式サイトでご確認ください。

特類の受験資格

特類以外の受験資格

甲4の難易度

甲4消防設備士の合格率は約30%です。3人に1人以下の合格率のため、人気の高さもありますが難易度はやや高めと言えるでしょう。

甲1の難易度

甲1消防設備士の合格率は26~27%と、甲4類よりも難易度が高くなっています。

甲種全体の難易度

甲種消防設備士全体での合格率は31%になっています。

甲種のなかで一番難易度が高いのが特類で、21~23%の合格率です。一方ほかの甲種の合格率は32~38%となっています。

一番合格率の高い甲3類で約38%のため、全体的に難易度はやや高めと言えるでしょう。

甲種の勉強方法

甲種消防設備士はやや難易度は高い資格だからこそ、取得すれば転職や就職、年収アップに活かせます。甲種消防設備士はしっかり勉強して臨めば、取得は可能です。

勉強方法はテキストと参考書、過去問題集をそろえて解くことです。また、休日などにまとめて勉強するのではなく、毎日勉強時間を設けて勉強を習慣づけるのが有効です。

勉強時間の目安

甲種消防設備士の勉強時間の目安は、3ヶ月間を見ておけば余裕を持って取り組めます。時間の配分としては、平日は1時間、休日は2時間です。3ヶ月間でトータル108時間ほどの勉強時間が確保できます。

もしも仕事が忙しいなどで平日は30分、休日は1時間ほどしか確保できない場合は4ヶ月前から勉強をはじめるとよいでしょう。

消防設備士のスペシャリストを目指すなら甲種特類も視野に

甲種消防設備士は全体的に難易度が高く、とくに1類と4類は消防法改正の影響から人気の資格となっています。

受験資格のない乙種に比べるとハードルが高くなりますが、甲種なら消防設備の工事も可能になるため、より選べる求人の幅や年収アップなどの可能性が広がるでしょう。

受験資格がない場合はまずは乙種を取得し、実務経験を積めば甲種の受験資格が得られます。

また、甲種には乙種にはない特類もあります。特類は現在の消防設備と同等性能のある特殊な消防設備の取り扱いができる唯一の免許です。

設備の劣化や施設の改修にともなって消防設備を新しく設置するときには、特類が活躍します。

甲種1類や4類を取得後、消防設備士としてのキャリアアップを目指すなら、特類取得も視野に入れてみましょう。