[更新日] 2019年10月21日

成形・加工の仕事内容とは?工場では体力的には楽な作業?

金属の加工技術に「鋳造」や「溶接」などがありますが、同じく樹脂の形を変えて様々な製品を作り出す技術が「成形・加工」です。

機械がオートメーション化されていて、原料の補充や管理がメインとなることもあります。そういった現場では、目視検査や軽作業よりも体力的には楽といったケースも。

今でも多くの需要を持つ成形・加工の技術内容や作り出される製品、職種としてのメリット・デメリット、働くために必要なものについて紹介しています。

執筆者のプロフィール

はたら工場マガジン編集部
編集部には工場での仕事経験者をはじめ、ものづくりに関わる資格保有者や人材派遣会社のキャリアコンサルタント経験者が在籍。工場や製造業の仕事をわかりやすく解説します。専門家たちが集まる「はたら工場マガジン」の運営から得た知見を活かした情報発信を心がけています。

成形加工とは

工場で行われている、成形加工の具体的な作業内容について見てみましょう。

樹脂の形を変える技術が成形・加工

ゴムなど天然素材で作られた樹脂を「天然樹脂」、石油を原料とするプラスチックや塩化ビニル、エラストマーなど人工的に作られた樹脂を「合成樹脂」と呼びます。これらの樹脂を金型の中へ充填し、固めて形を整え、色々な製品に使用する技術が「成形」です。成形された樹脂に研磨やマシニングなどを施す技術が「加工」です。成形と加工は両方行う工場がほとんどのため、「成形・加工」と表記される事が多いです。

熱で固まる・溶ける両方の合成樹脂の成形が可能

合成樹脂の中には、加熱によって溶け出して柔らかくなる「熱可塑性樹脂」と、熱によって固まる性質をもつ「熱硬化性樹脂」両方の成形が可能です。

熱可塑性樹脂は、高熱を加熱した後に低温の金型に入れられて成形されます。ただし、熱可塑性樹脂は高温にすればするほど粘着度が高くなってしまうため、必要以上に加熱し過ぎてしまうと、今度は金型から取れなくなってしまいます。よって、高速かつ高圧での充填作業が必要ですが、その分早く成形ができるメリットを持ちます。

熱硬化性樹脂は、加熱すると硬化する性質を利用して成形を行います。まず、50℃前後の比較的低い温度で熱硬化性樹脂を加熱し、少し柔らかくします。そのまま高温に加熱した金型に流し込み、金型の高温を利用して熱硬化性樹脂が固まり、成形します。金型の熱を利用しての硬化は成形までに時間がかかるデメリットがありますが、高圧をかける必要がないため、半導体の封止部分など圧力がかけられないデリケートな部品に使う合成樹脂の加工に適しています。

成形の手順は5工程

成形は、使用する樹脂を加熱して金型に流し込む型締工程、流し込んだ金型に低圧力をかけて形を整える射出工程、流し込んだ樹脂の量が適切か図りながら冷却を行う計量および冷却工程、冷え固まった樹脂の金型を開ける型開工程、成形された樹脂を金型から取り出す取出工程の5工程を踏みます。

成形技術の種類と特徴について

特徴やどんな製品に用いるかで、成形加工は大きく6種類に分けられます。

射出成形(インジェクション成形)

合成樹脂が溶けだす温度まで加熱し、融解したところに射出圧を加えた低温の金型に流し、成形する技術を「成形」または「射出成形」と呼びます。

金属成形技術の「鋳造」と比較すると、鋳造は高温・低圧に対して射出成形は低温・高圧で樹脂の成形を行います。

二色金型成形

違う色を持つ樹脂同士、もしくは材質同士を二回に分ける、または1つの金型に二か所から同時に充填して射出成形する方法が「二色金型成形」です。プラスチック製の歯ブラシやパソコンのキーボードなど、違う材質の樹脂、またはツートンカラーの樹脂製品を作る時に利用されています。

インモールド成形

射出成形に使用する金型の中に、あらかじめデザインを印刷した金属やポリエチレン製の板を入れ、充填した合成樹脂の表面に印刷したデザインを転写しながら射出成形する方法が「インモールド成形」です。自動車部品や電化製品への意匠付けのほか、プラモデル製品や携帯電話の装飾のためにも活用されています。

射出成型する合成樹脂の表面または裏側にだけデザインをほどこすシングルインモールド、合成樹脂の両面に箔をおして立体感も出せるダブルインモールドなどの成形方法があります。

インサート・アウトサート成形

射出成形に使用する金型の中に金属製品を入れておき、その周りに樹脂を充填させて成形する方法が「インサート成形」「アウトサート成形」です。インサート成形はネジや金属の棒など、アウトサート成形は内側の空いた金属の板などを金型に入れて成形します。

金属+プラスチックや、金属+ゴムなど、異なった材質や性質を同時に成形するには高い技術力が必要ですが、現在は無人機械でインサート成形ができる「自動インサート成形」も行えるようになりました。自動車の鍵やパソコンのパーツ制作などに利用されています。

コアバック成形

成形に使用される金型は、凸部分が雄型またはコアと呼ばれ、凹部分が雌型またはキャビティーと呼ばれます。成形中にコアをスライドやバックすることで、成形する樹脂の一部に厚みを出したり、二色に成形したりする技術を「コアバック成形」と呼びます。

その他の成形加工

ほかにも、カードケースやスマートフォンケースなど、薄い樹脂製品をつくるための「薄肉成形」や、樹脂製品の強度や耐久力を上げるために樹脂を厚くする「肉厚成形」などの成型方法があります。

工場での成形・加工のお仕事、メリット・デメリットとは

工場で行われている成形加工のお仕事の内容や、メリット・デメリットについて見てみましょう。

プラスチックや樹脂メーカー工場で勤務

成形加工のお仕事は、「合成樹脂製造技術者」と呼ばれ、プラスチックや樹脂のメーカーの工場内で勤務します。成形・加工は機械によって自動化されていることが多いため、主な仕事は成形機械に樹脂などの材料を投入する、成形・加工でできた樹脂製品の検品や梱包を行います。

未経験からでも始められる

プラスチックや樹脂メーカーの工場で働く合成樹脂製造技術者になるには、特定の資格は必要ありません。初めて成形加工のお仕事をしたい方はもちろん、全くの工場のお仕事未経験者でも始められます。

求人数が多いので、条件の良い求人も見つけやすい

合成樹脂を使用した製品は日常生活の中でも幅広いところで利用されています。なので、プラスチックや樹脂メーカーの成形・加工のお仕事は求人も豊富。正規雇用を目指したい方、パートやアルバイトとして働きたい方、期間工を利用して期間限定で働きたい方など、色々なニーズに対応できる求人が見つかりやすい職種です。

未経験でも可だが、資格取得でキャリアアップも

成形・加工のお仕事は未経験からでも始められますが、厚生労働省の認定した国家検定資格である「プラスチック成型技能士」を取得すると、さらに仕事の幅も広がりキャリアアップも目指せます。プラスチック技能士は射出成形、圧縮成形、インフレーション成形、ブロー成形の4種類がありますので、自分が持つプラスチック成形・加工技術に合わせて資格取得が可能です。技能検定には現在、特級、1級、2級、3級があり、各都道府県職業能力開発協会が検定試験を実施しています。技能試験の実施計画は毎年2月ごろに公示されるので、自分が受けたいプラスチック成型技能士の技能試験の日程を確認しておきましょう。

参考:東日本プラスチック製品工業協会 平成29年度 技能検定実施計画が告示されました

試験内容は前期技能試験で射出成形技能検定1級、2級、後期技能試験で特級プラスチック成形、ブロー成形作業、射出成形作業3級に分かれて実施されます。以下例として射出成形技能試験概要を掲載します。

【引用ページ】

<前期技能検定>

射出成形作業1級

指定された熱可塑性樹脂から2種類(合計重量11kg)を選択し、射出成形により箱型の成形品、1種類40個、2種類の合計80個を製作し、「成形収縮率計算書」および「材料歩留り率計算書」を作成する。

試験時間  標準時間 3時間10分 ・ 打切り時間 3時間40分

射出成形作業2級

指定された熱可塑性樹脂から2種類(合計重量9kg)を選択し、射出成形により箱型の成形品、1種類20個、2種類の合計40個を製作し、「成形品の寸法測定表」に測定値を記入する。

試験時間  標準時間 2時間30分 ・ 打切り時間 3時間00分

※上記の外、圧縮成形作業試験が3年に1度実施されます。

引用:東日本プラスチック製品工業協会 プラスチック成形技能検定(国家資格

デメリットは、自動作業が多いため作業感が欲しい人には物足りない

成形・加工のお仕事のデメリットは機械による無人化で成形・加工を行うプラスチック・樹脂メーカーの工場も多いため、自分の手で製品を作り出している、という作業感が味わえないことです。ものづくりに携わりたい!という方には物足りなさを感じることも。逆に、技術力はないけれども身近なものづくりの現場に触れてみたい、という方にはおすすめです。

まとめ

私たちの日用品に欠かせない、成形・加工のお仕事について紹介しました。未経験者でも働きやすく、資格取得も目指せる成形・加工のお仕事は色々な方のニーズが満たせる工場のお仕事です。