[更新日] 2020年6月14日

危険物取扱者とは?難易度・合格率と資格取得までの流れ

危険物に指定されたものを貯蔵、または取り扱う職種や業種の場合、危険物取扱者資格が求められることがあります。

危険物と一口に言ってもガソリン以外のものもあり、貯蔵や取り扱いのほか保守点検なども危険物取扱者の業務範囲に入ります。

ここでは、危険物取扱者の資格の種類や資格取得のメリット、向いている人や試験の難易度について解説します。

活躍の場が広がっている危険物取扱者資格に興味のある人や、危険物取扱者の資格を取得したいけれどもどの種類を取るべきか分からない人も、ぜひ参考にしてください。

執筆者のプロフィール

はたら工場マガジン編集部
編集部には工場での仕事経験者をはじめ、ものづくりに関わる資格保有者や人材派遣会社のキャリアコンサルタント経験者が在籍。工場や製造業の仕事をわかりやすく解説します。専門家たちが集まる「はたら工場マガジン」の運営から得た知見を活かした情報発信を心がけています。

危険物取扱者とは

危険物取扱者とは、一定数量の危険物を貯蔵、または取り扱う施設に設置が義務付けられている資格者です。ガソリンスタンドや石油貯蔵タンク、化学工場、タンクローリーなどの施設が該当します。

危険物取扱者は、危険物の取り扱いと定期点検、保守の監督ができます。また、乙種、丙種の危険物取扱者資格取得者が立ち会えば、危険物取扱者資格を持っていない人でも危険物の取り扱いや定期点検ができるようになります。

危険物取扱者の資格は3つあり、取り扱う危険物が異なります。働く施設で取り扱う危険物に該当する種類の資格を取得するのが重要です。なお、危険物取扱者は国家資格で、全国共通で運用できます。

危険物取扱者の種類

危険物取扱者は、丙種、乙種、甲種の3種類の免許があります。それぞれの免許によって取り扱える危険物が異なるので、取得のさいには確認しましょう。

丙種

丙種危険取扱者は、ガソリン、灯油、軽油、重油などの特定の危険物を限定して取り扱いができます。

乙種

乙種危険物取扱者は、第1類から第6類までで免許で指定された危険物の取り扱いが可能です。丙種で取り扱いできるガソリンや灯油、軽油などの第4類に加えて、塩素系、りん系、カリウムやナトリウム系なども取り扱えるようになります。

また、乙種危険物取扱者が立ち会えば、危険物取扱者資格を持っていない人でも、乙種で取り扱える危険物の取り扱いや定期点検が可能です。

甲種

甲種は、乙種、丙種ふくめたすべての危険物の取り扱いが可能です。また、乙種と同じく甲種危険物取扱者が立ち会えば、危険物取扱者資格を持っていない人も危険物の取り扱いと定期点検ができるようになります。

甲種のみ受験資格がある

危険物取扱者は、乙種、丙種は誰でも受験可能です。一方、甲種のみ以下の受験資格いずれかを満たした人のみ受験できます。

  • 大学等(大学、短期大学、専門学校など)で化学に関する学科を卒業した人
  • 大学等で化学に関する授業科目を15単位以上修得した人
  • 乙種危険物取扱者免状をすでに持っている、かつ危険物取扱いの実務経験が2年以上
  • 第1類又は第6類、第2類又は第4類、第3類、第5類のうち4種類以上の乙種危険物取扱者免状の交付を受けている
  • 化学に関する時効を専攻して、修士、博士の学位を授与された人

危険物取扱者の資格取得メリット

危険物取扱者資格は必置資格のため、なければなれない職種の求人も多く存在します。

ほかにも、危険物の取り扱いに関する職種以外に、ビルなど多くの人が集まる施設の保守点検に関する職種、危険物に関する知識を活かした防災に関する職種などに有効な資格です。

危険物の資格が活かせる会社・現場
業務内容 職業・就業先
危険物を取り扱う 化学薬品工場、ガソリンスタンド、タンクローリーのドライバーなど
保守点検 警備スタッフ、ビルのメンテナンススタッフ、発電所の点検スタッフなど
防災や予防関連 消防士、防災士、消防設備士など

年収や給料、転職に有利になる?

危険物取扱者資格を取得しておくと、選べる求人の幅が広がります。

また、必置資格のため、求人によっては危険物取扱者資格を取得しながら働ける、というものも多くあります。

すでに危険物取扱者取得があれば、転職にも有利となるでしょう。

危険物取扱者資格が必須、またはあると優遇される求人は種類が豊富にあります。年収も400~900万円と幅がありますが、高給の求人も多くあるのが特徴です。

危険物取扱者の仕事内容

危険物取扱者は、免許の種類によって取り扱える危険物が異なります。

また、乙種と甲種なら立ち合いのもとで危険物取扱者資格のない人も危険物を取り扱えるようになるため、幅広い分野で活躍できるでしょう。

危険物取扱者としての仕事内容は、おおむね以下のようになります。

  • 免許で取り扱える危険物の保守点検や管理、保安
  • 乙種・甲種は危険物取扱者資格のない人の取り扱いや保守点検時の立ち合い

向いている人

危険物取扱者に向いている人は、責任感のある人と、集中力がある人、慎重に仕事ができる人です。

取り扱う危険物は、扱い方を間違えると火災などの大事故につながります。自分の行なっている仕事内容に対していつでも高い責任感を持ち、適切な取り扱いができる人が求められています。

ほかにも、取り扱いや保守点検などこまかい作業が多いため、集中してひとつの仕事をできる人にも向いています。また、危険物を取り扱うさいに適切に行なうこと、保守点検の観点から少しの変化にも気づく、慎重さも求められます。

注意点

危険物取扱者資格は甲種、乙種、丙種がありそれぞれで取り扱える危険物が異なります。危険物取扱者資格を取得して求人に活かそうとする場合、必要となる免許の種類を確認しましょう。

求人内容には、必要な危険物取扱者資格の種類が記載されています。また、甲種は乙種、丙種と異なり受験資格があります。必要な学校を出るか、乙種を取得してから危険物取り扱いの実務経験2年以上を積むかして、甲種取得を目指しましょう。

危険物取扱者の試験と難易度

危険物取扱者になるためには、各危険物取扱者資格を受験し、合格しなければいけません。

試験日程は、一般財団法人 消防試験研究センターの公式ページにて公開されています。

申請方法

受験するには、書面申請または電子申請を行います。

書面申請

受験願書や卒業証書などの必要書類をそろえて、受付期間内に都道府県ごとの(一財)消防試験研究センター各道府県支部へ申請します。

東京都の場合、(一財)消防試験研究センター中央試験センターとなります。

電子申請

一般財団法人 消防試験研究センターより申請可能です。

試験について

試験科目ごとの成績が、それぞれ60%以上で合格になります。いずれの免許も筆記試験のみ(甲種・乙種は五肢択一式、丙種は四肢択一式)で実技試験はありません。

丙種の合格率

丙種の合格率は50~51%です。難易度としては普通レベルなので独学でも合格は十分可能です。

受験資格はなく誰でも受験可能です。丙種の試験科目は以下の通りです。

乙種の試験科目
試験範囲 出題数
危険物に関する法令 10問
燃焼及び消火に関する基礎知識 5問
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 10問

丙種の試験手数料

乙種の試験手数料は3,700円です。

乙種の合格率

乙種は取り扱う危険物の種類によって合格率が違います。

人気の乙4(第4類)が38~39%とやや合格率は下がりますが、ほかのものは67~68%と高めの合格率になっています。

乙種も受験資格はないため誰でも受験できます。乙種の試験科目は以下の通りです。

乙種の試験科目
試験範囲 出題数
危険物に関する法令 15問
基礎的な物理学及び基礎的な化学 10問
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 10問

乙種の試験手数料

乙種の試験手数料は4,600円です。

また、乙種は同時に違った類の試験も受験ができますが、申請方法は書面申請のみになります。

すでに乙種の危険物取扱免許の交付を受けていて、乙種のほかの類を受験する場合は一定の試験科目が免除となる場合があるので、受験前に確認しておきましょう。

甲種の合格率と受験資格

甲種の試験科目は以下の通りです。甲種になると難易度が上がり、合格率は38~39%です。

甲種は実務経験など受験するにあたって一定の条件があります。

受験資格

甲種の受験は、特定の学部卒や乙種取得後2年間の実務経験などの受験資格が設定されています。試験手数料は6,600円です。

甲種の試験科目
試験範囲 出題数
危険物に関する法令 15問
物理学及び化学 10問
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 20問

有効期限

危険物取扱者資格を持ち、危険物の取り扱いに関する仕事を行っている場合、定められた期間ごとに講習を受けなければいけません。

また、免許交付から10年経過ごとに、写真の張替が義務付けられています。

危険物は転職に有利な資格

危険物取扱者は必置資格のため、取得しておくと未経験職への転職にも有利になります。

高給の求人も多いため、年収アップのための転職にも有効な資格です。難易度は免許の種類によって異なり、全体的にはやや高めのためしっかり対策をしてから受験をしましょう。

求人内容に応じて丙種、乙種、甲種どの免許が必要かも確認するのが重要です。